METAL GEAR SURVIVE レビュー

METAL GEAR SURVIVE レビュー



まず初めに言っておきたい。
私は小島秀夫のファンであり、メタルギアのファンでもある。

メタルギアの礎を築いてきたのは小島秀夫であることは間違いないが、彼の生み出した作品は、モノとしても遺伝子としても、決してなくなりはしない。
METAL GEAR SURVIVEは、小島秀夫のメタルギアを信じていると、メタルギアに見えないかもしれない。
小島秀夫作品でみられる独特の言い回し、日本語を英語で言い換えたり、カットシーンでの演出だったり、そういうものに関しては、端から期待していなかった。
それは、メタルギアアシッドやポータブルオプスでも同じで、直接的な監修が入らない限り、模倣品であることは変わらないだろう。

地獄と書いてディーテと読んだり、カットシーンで映画的演出をなしてみたり、従来のメタルギアを受け継ごうという意思は伝わってくる。
率直に言って、それらはチャチなものに感じてしまった、しかし、それらの完成度を語るには、私はシリーズをプレイしすぎている。
ストーリーに関しては、多少面白い展開はあれど、単調に語られ、キャラクターには、お世辞にも魅力があるとは言えない。また、その魅力のないキャラクターに愛着が湧くような演出も成されていない。
結局のところ大事なのは、総合的に見て面白いゲームであるかだ。
それで実際プレイしてどうだったか?という話。

過去にもサバイバルを題材にしたゲームは存在したが、ここまでサバイバルにフォーカスした作品は少ない。
「サバイバルアクション」というジャンルに括られている、ラスト・オブ・アスやバイオハザードも、一本道を辿る中でのサバイバルであり、自由度は低い。
METAL GEAR SURVIVEは、コンソールにはほとんどなかったジャンルと言っても良いのではないだろうか。


<やることの螺旋階段が作られていく>
このゲームにおいて、人間はあまりにも貧弱な存在だ。
少し走れば息が切れ、時間が経てば腹が減り、喉が渇き、怪我をすれば長時間休むか、医療機器が必要になる。

本当に生きるために必要なことを、プレイヤーは強いられる。

喉が渇くため、水が必要になる。近所の水溜りから水を採集したい、そのためには容器が必要。取ったところで、ただの水溜りなので腹を壊す可能性がある。そのリスクを避けるためには、浄水器は必要。
腹が減るため、動物を狩る必要がある、そのためには武器は必要、その武器を作るために木を採集する必要がある。狩ったところで、生肉をそのまま食べるというリスクがあり、それを避けるため、キャンプを作り調理する必要がある。

といった、Aをするために必要なBを、それを作るために必要なCを、そのためにDを、といった螺旋階段を登る必要がある。

どこで妥協するかは、プレイヤー次第だし、レベルデザイン的にもある程度妥協せざるを得ない状況が生まれる。
この妥協点の探しどころや、目的に目的が追加されていく感じが、たまらなく楽しい。

どこかで感じた感覚であったが、それはモンハンだ。
グラビモスを倒すためにボウガンを作りに行こうとし、そのためにガノトトスを狩りに行こうとし、そのために火の太刀を作るためにレウス狩猟計画を立て、といった装備の螺旋階段を登ることが多いゲームだ。(ワールドはヌルヌルのヌルゲーなのでそんなんないが)

私は目的を達成する過程が楽しいと思っている人間なので、良い意味でゲームに振り回されている感覚が心地よい。
常に目的を持ってゲームがしたい人にはうってつけのゲームだ。


<ウォーキング・デッドのファンに、プレイして欲しい>
私はウォーキング・デッド(以下TWD)のファンだ。ノーマン・リーダスは凶悪にカッコイイ(からデス・ストランディングに登場することが判明した時は飛び上がって喜んだ)
刑務所を舞台にしたシーズンなんかを見ていると、こういう世界で、自由に拠点を作り、防衛し、スカベンジできるゲームが欲しいと願っていた。
ゾンビではないものの、このMGVはこれを叶えてくれた。
フェンスを建てて、それに群がってくるゾンビをスピアで殺す、というようなプレイングは、TWDのファンにとってたまらないものだと思うし、ゾンビ映画のファンなら、一度はやってみるべきだ。
四方八方からワンダラーに襲われる状況を、一人で対処するのは難しい。
その中で、ワンダラーの予測ルートをマップ上に表示したり、ワンダラーは基本目標物を目指し、プレイヤーを見つけるとこちらに寄ってくる、というゲーム的なチューニングも成されていて、ハードコアなゲームプレイであるものの、理不尽さを感じる場面は少ない。

その他にも、この世界のワンダラー(ゾンビ)は、音に惹かれるというお決まりの習性を持っている。
遠くに音を立て(MGSでいう弾倉)、大量のワンダラーがそちらに群がり、その隙に怪我人を運ぶようなシーンを自分で演出できた時には、自由度の高いプレイにワクワクした。
もちろん、道具を使ってその場のワンダラーを全て倒すようなパワープレイもできる。

そういう意味では、ステルスアクションは受け継いでいると言えよう。しかし過去作のようにステルス場面はデザインされているわけではない。自らステルスをデザインし、プレイに繋げることが必要であり、これまで以上に、ステルス要素は濃くなっている。


<マイクロトランザクション>
近年なにかと取り沙汰される要素だが、MGVにも取り込まれている。
本作では課金で得られる通貨をSVコインと呼んでいる。主な用途は、ブーストパス(ゲーム内で得られるエネルギーの採取量等)の購入や、新しいセーブデータの解放(所謂、2キャラ目の作成)時に必要になる。
この通貨は、通常のプレイで手に入れることは基本的にできない。(ログインボーナス等のみで入手可)
私は、デラックス・エディションを購入したため、購入時にブーストパスが付属していたが、あえて使わずにプレイした。
が、全く問題ない。エネルギーが必要になったから稼ぎにいく必要があったり、ということは全くない。
ただ、マップ内にランダム?に現れるエネルギーの採掘(サイドミッションのようなもので、ストーリー進行には関係がない)をこまめにやっていたから、ということもある。ストーリーだけをズカズカ進めたい人にとっては、便利かもしれないが、それはプレイスタイルによって、どんなゲームでも生まれてくるものだ。
2キャラ目以降の作成に関しては、ゲーム本体の価格(4980円税別)を考えれば妥当かもしれないが、一つだけ問題がある。
トロフィーだ。もちろんトロフィーはやりこみ要素の一つであることは間違いないが、時限トロフィーが2つほどある。(ある地点までに取得しないと、後に取ることができないトロフィー)これはいただけない。

その点を除けば、課金せずとも、問題はない。その点は安心して良い。
むしろ、せっかくSVコインを設けているなら、見た目を積極的に変更できるような要素等、ゲームプレイにかかわらない課金要素を導入すると面白い。


<マルチプレイ>
協力プレイであるが、取得したスコアに応じて明確な順位付けされ、それによってボーナス報酬が与えられるため、スコアを競い合うことになる。
一つのポイントを、WAVE形式で迫りくるワンダラーから防衛するというもので、採取、クラフト、建造、アクションが必要になってくる。
こちらも中々難易度は高く、複数体のワンダラーを丸腰で相手取ると、あっさり倒されてしまう。その中でカバーのし合いは、シューターによく見られる楽しさを持っている。
また、役割分担による連携はありがちであるものの、COOPならではの面白さがある。高難易度ミッションではギリギリの戦いを強いられ、一時の判断が成功を左右することも少なくはない。
リプレイ性は低めではあるが、シングルプレイに疲れた時や、資材が必要な時に、出稼ぎ感覚で気軽にプレイできる。


<総評>
メタルギアを丁重に扱い、上手くIFの世界を作り上げた。サバイバルアクションとしての質は非常に高く、ハードコアなゲームデザインと相まって、濃いゲーム体験が得られる。コンソールとして大変貴重な作品だと言える。
しかし、ストーリー、マルチプレイは磨かれているとは言えず、せっかくの素晴らしいサバイバルアクションを100%楽しめる環境でないのが、大変残念だ。


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