松野泰己 最新作「アンサングストーリー」の開発資金キックスターターで募集開始 2014/1/30追記



思い出は物ではない、とか、愛の表現は物ではできない、とか
様々な綺麗な表現の言葉があるけれど、僕はそれは半分あたりで半分外れのように思える。

良くも悪くも人はどんなに良い出来事も悪い出来事も時間の経過と共にゆっくりゆっくり薄れていき、やがては忘れてしまう。

そんな時、僕等の生活と共にあった特別な"物"は僕らの生活を事細かく記憶していて、それに触れれば瞬時にそこにタイムスリップして記憶が蘇る。

そういう意味では物はただの物質などではなく、生き物だとすら言う事が可能ではないだろか。

たかが物されど物。

僕は生活の節目節目に一緒にあった"物"がとても大事である。
生き物は数年の歳月をかけて命を落とすけれどそれは物も同様で、大地震によって或いはもっと簡単な事故で一瞬にして姿を変えてしまう事もある。命あるものと何ら大差ないと思える。

だから僕は映画やゲームといった物を単なる娯楽もしくは暇潰しと言い切る事に若干の抵抗を覚える。


松野泰己氏と言えば古くは伝説のオウガバトルやタクティクスオウガ、ベイグラントストーリー、FFTA、最近ではタクティクスオウガ運命の輪、クリムゾンシュラウドなど、大なり小なり常に人の心に残る数々の名作ゲームを生み出してきたベテランクリエイターの一人である。

(特にタクティクスオウガやベイグラントストーリー、FFTAなどは圧倒的なゲーム体験と共に物語の面からも多くの人の記憶に残る言うまでもない暇潰しとしてのゲームを超えた名作中の名作ゲームであり、ここで僕がわざわざ個人的な思い出とこれらのゲームを重ね合わせてナルシシズムたっぷりに振り返るような事はしない。)

近年の松野氏の活動は決して派手なものとは言えなかった。

レベル5入社後、松野氏の事を知らない人に向けての自己紹介とも言える短編「クリムゾンシュラウド」を発売して以来、音沙汰が無くなり、気が付いたら同社を退社していた。

それが去年のTGSで「アンサングストーリー」が突如発表されたのは記憶に新しい。
(4gamer:http://www.4gamer.net/games/233/G023374/20130921007/

実に松野氏らしい世界のゲームで何より戦略性の高いボードゲームライクなゲームやカードゲームというところに興味がわいた。

クリムゾンシュラウドの時に感じた事を率直に述べると松野氏の持つ世界観をそのまま絵に出来るような人間を失ってしまった事で不自由している、或いは完全に表現しきれていない、と思ったのが正直なところである。

しかし今回のイメージ画を見る限り、久々に松野氏にフィットするアートセンスを持つ人がパートナーになったのではないか?と考えられるし、そう思うと期待感は止まるところを知らない。


アンサングストーリーには松野氏が世界観のみを提供したデジタルカードゲームの「アンサングストーリー」とシステム設計でも松野氏が加わるボードゲームライクなゲームの「アンサングストーリー名もなき戦士たちの物語」と二つあるが、
今回キックスターターでの開発資金募集がはじまったのはどうやら後者のようだ。
(4gamer:http://www.4gamer.net/games/233/G023375/20140115030/

キックスターター方式は目標金額に達する毎に特典やゲームの機能が追加されていくが、このリストでは特典に崎元氏のサウンドトラックを確認する事が出来る。

(アンロックリスト)
即ちこのゲームの音楽を担当するのは同氏であり、同氏の音楽も松野氏の世界を表現するうえでかなり大きなウェイトを占める重要な位置となっている。

まさかまたこの二人の組み合わせを見ることが出来るとは(感涙)

未だキックスターター方式の資金調達を「乞食」などと悪しざまに言う人間も散見されるものの、自分の好きなクリエイターが作るゲームに、例え微々たるものであったとしても自分そのものが「可能性の粒」となって協力する事が出来るこの方式は、クリエイターにとってもユーザーにとってもWin-Winな関係ではないだろうか。

そうした工程を経て僕等の手元にやってくるゲームは思い出その物に他ならないだろう。


恐らく松野氏がオンラインゲームを意識しだしたのはベイングラントストーリーをだした頃くらいで、それ以降松野氏のゲームではそれを意識したと感じさせるゲームのものが増えた。FFTAではクランと呼ばれるチームが主人公と同じ様にフィールド上を活動していて疑似オンラインゲームの様なものが味わえたし、運命の輪ともなるともうそのやり込み度合いはオンライン要素を抜いたそれだった。

ファンタジーゲームと聞くと現代の感覚からいくと古臭さすら感じるものの、そこに物語性だけではなく、どん欲に現代のゲーム性をいつも盛り込んできたのが松野氏のゲームだと思う。

今回も極めて古典的なゲームスタイルとなるものの、それをどういう風に現代仕立てのゲームにするのか、ファンとしては目が離せない。

昨今若い人のTRPGやボードゲームといったアナログゲーム回帰が少しずつみられるようになってきたが、このゲームはそういったものが好きな人にも興味深いゲームとなりそうだ。

いずれにしても松野氏の動きを今か今かと待っていた者にとって、これ以上の朗報もないだろう。

重度の松野氏ファンよ、キックスターターに集え!!!!


アンサングストーリーのキックスターター公式
http://www.kickstarter.com/projects/482445197/unsung-story-tale-of-the-guardians


※2014年1月17日補足

1.松野氏とPlaydek社の関係性,アンサングストーリーに於ける同氏の立ち位置,松野ゲーの定義

一部分かりにくいところがあったので誤解の無いように追記。
Playdek社と松野氏の関係性は、世界設定・シナリオの提供、それに伴うレベルデザインの指示等でありディレクター(ここではゲーム全体の監修)ではなく飽くまで制作チームの一人といった捉え方をする方が適切。(少なくとも今現在は。)

また同氏のツイッターによると開発がまだそこまで進んでいないためどこまで監修に携わる事が出来るか現時点ではまだ分からないとの事で、出資という話しも絡む事もあり所謂「松野ゲー」と期待して出資しようと思うならば松野ゲーという事に対しては「今はまだ違う」と言っておいた方が適切だ、と記されています。
(この辺は同氏のツイッターを見た方が早いです。https://twitter.com/YasumiMatsuno

何を以て松野ゲーとするかは非常に定義が難しいと思います。
綿密な背景設定や物語を以て松野ゲーとする人もいるだろうし、一癖も二癖もあるゲームシステムに対して松野ゲーと呼ぶ人もいるだろうし・・・

ここでの同氏の「松野ゲーではない」という発言は「松野氏がディレクターとなってゲーム全体を監修するわけではない」から「松野ゲーではない」のだと思います。

私見を入れてしまえば世界設定・シナリオの提供とそれに伴うレベルデザインを松野氏がされるならばユーザーからすればそれは立派な松野ゲーなのかなと思います。

今回のアンサングストーリーは同氏の過去のゲームからイメージされる物語性の高いゲームよりも、よりゲームシステム寄りなゲームになると想像しますが、過去オンラインゲームに興味を持っていた事や最近(とはいってもベイグラくらいから現在までの一連の流れ)の作風とボードゲームやカードゲームを手掛けるPlaydek社のコンビネーションは、ゲームシステムだけ抽出してみても間違いなく高いゲーム性を期待出来ます。

Playdekは日本ではなじみの薄いゲーム会社ですが、数々のボードゲームやカードゲームを手掛ける会社だそうです。

iPhoneで遊べるゲームなんかも出ていて、特にAscensionというゲームなんかはMagic The Gatheringが好きな人なんかはすぐに飛びついちゃうような格好良いデザインです。

僕もそのうち買ってみようかと思います。


2.キックスターターによる開発資金を募集した経緯

プロジェクト拡張のための開発資金募集でありPlaydek社の判断。
松野氏は15日に開発資金募集の事を知ったようで、同氏による募集ではない事を誤解の無いように記しておきます。


3.キックスターターの出資の仕方

沢山の方に読んでもらえましたがキックスターターの出資その物がまだ敷居が高いといった声も聞かれました。

確かに英語のサイトであったりして未だにハードルは高いかとも思います。

自分が説明しようかとも思いましたが、折角既に分かりやすいサイトがございますのでそちらを参照していただければなと思います。

Kickstarterプロジェクトの支援方法
http://www.cf-publishing.com/how-to-back-kickstarter-project-from-japan/


4.ゲームは日本語か英語か

iOSで配信されるゲームは既に日本語対応化が決定しております。

が、キックスターターでの出資による特典などが日本語版に対応しているか、或いはアートブック・サウンドトラックなどが日本語に訳されているか不明ですのでこれはPlaydek社に直接問い合わせるのが確実かと思います。


※2014年1月30日追記

少し前にスクウェアエニックスを退社された吉田明彦氏(※1)だったが今回アンサングストーリーのアートに参加する事になったようだ。(どの程度の比率かは不明)

こうなってくるといよいよ松野氏陣営のお馴染みのメンバーがほとんど揃った事になる。
勿論Playdek社の持つ特徴と松野氏のもつ特徴の化学反応が最も魅力的な部分ではあるものの、同氏の参加はオールドファンにとって心強くそして嬉しいサプライズではないだろうか。


(Twitterからの動画転載)

※1
タクティクスオウガ、ファイナルファンタジータクティクス、ベイグラントストーリーなどのアートを担当し最近ではブレイブリーデフォルトやファイナルファンタジー14のアートを担当した。
その名前を知らなくとも絵を見たら「知ってる!」という方も多いのではないでしょうか。


9/22に投稿した
アンサングストーリー続報
http://huteikigame.blogspot.jp/2015/09/2015101.html

こちらが最新記事なのでよろしくお願いいたします。




筆者:ロジオン

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